『あのこは貴族』岨手由貴子

ビルがひしめく東京の夜、タクシーが走る。その後部座席に座る華子。向かうのはホテルで催される家族の新年会。母親から華子への話題は結婚の催促や次のお見合いの話ばかり。27歳の華子の未来に結婚以外の選択肢は無いし、本人もそう信じている。伴侶探しに奔走する華子は、良家の子息である幸一郎とお見合いし、この人ならと高揚する。

『敵』吉田大八

一軒の日本家屋──そんな静かなショットから始まる。家主・渡辺儀助は、元大学教授の一人暮らし。朝起きて顔を洗い、身支度を整え、米を研ぎ、魚を焼き、ひとり黙々と食事を済ませる。食器を洗い、コーヒー豆を挽き、買い物へ。衣・食・住に至るまで、70歳を超えたとは思えない“キチンとした”暮らしぶりだ。