風呂キャンセル界隈も肯定の言葉『生きる言葉』俵万智

「稀代の歌人」という触れ込みに惹かれた。言葉を繰る人がどのように言葉について語るのか。筆者の周辺に巻き起こる暮らしや育児を通した、現代の言葉の観察日記、時事評論である。とはいえ「サラダ記念日」以外の作品や著作を知らず、読みながらプロフィールを知る。序盤、息子さんの育児に関する部分では、途中何を読んでいるのか不思議な気分...

世界を変革する文学部ってカッコいい『「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門』小林真大

はじめに ブログ等で批評文のようなものを書くにあたり参考書として読んだ。文学批評というものの型とその趨勢、批評の意義がまとめられた入門書。文学批評の歴史はまるで繰り返される抗争のような物語に感じられた。今後作品の批評を読み書きする際にどの観点なのか考えていきたい。また、最も興味深かったのは終章の批評の存在意義だ。文芸批...

『BUTTER』柚木麻子

海外で翻訳版が評価され、改めて日本でも評判となった本作を電子書籍で読んだ。作者が着想を得たといわれる実際の事件「首都圏連続不審死事件」は2007〜2009年に起き、報道や裁判が世間を騒がせたのは2010年代前半頃。本小説の初版は2017年、翻訳版の出版は2024年であり、意外と時間が経っていたのだと読後に知った。また、...

『チ。―地球の運動について―』魚豊

15世紀前期のP王国というヨーロッパ風の国。架空の宗教C教が権威を持ち、宇宙の中心が地球である天動説を公認の学説とする。神の力を示す天動説に対して地動説は異端の教え。秩序を乱すものは処罰の対象であり、異端者はときに極刑にもなる。天文学の研究に高いリスクが伴うという舞台設定だが、史実では地動説を語るだけで火刑までにはなら...

『ダンジョン飯』九井諒子

Kindle Paperwhiteを購入したところ、Kindle Unlimitedが無料だったため、レコメンドされた『ダンジョン飯』1巻を読み、見事にはまって全14巻を読了した。アニメ化もされているようだが未見なので、ここでは漫画について。 最初はタイトルの通り、迷宮を冒険するパーティが食うに困って魔物を料理して食べ...

『ババヤガの夜』王谷晶

(ネタバレを含みますのでお気をつけください。)英国ダガー賞を日本人で初受賞というニュースをきっかけに読んだ。作者の王谷晶さんのお名前も知らず、名前の読み方や性別も知らなかった。とはいえ、名前の読み方や性別がわかったからなんだというのか。 書評とネタバレについて、そもそもここに文章を書き連ねる理由まであれこれ考えさせられ...

『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ

本書は2011年にイスラエルで初版が刊行され、2012年に英訳版、2016年に日本語訳、そして2023年に文庫版として出版された。私がこの文庫版で本書を手に取ったのは2025年である。原題は Sapiens: A Brief History of Humankind。直訳すれば「サピエンス:人類の簡潔な歴史」といったと...

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆

「趣味は読書です。でも最近、仕事が忙しくて読めていない…」そんな思いを抱える多くの人を惹きつけ共感を呼びそうなタイトル。 筆者は、企業に就職した後、大好きだった読書ができなくなったと振り返る。作中では映画『花束みたいな恋をした』の登場人物になぞらえ、忙しい日々の中で読書よりもスマホでSNSやゲームに時間を費やしてしま...